お笑い徹底分析【霜降り明星】

 

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 縦横無尽。M-1グランプリ2018決勝戦にて関西若手の雄霜降り明星の漫才を表したこのキャッチコピーは、優勝してから現在に至るまでの彼らをよく表している言葉であると僕は思う。

 

 2020年12月現在、霜降り明星のレギュラー番組はテレビが10本、ラジオが2本。加えてCM出演が10本、公式YouTubeチャンネル登録者数は112万人のマンモスチャンネルとなっている。まさにメディアを「縦横無尽」に駆け巡る。

 

 芸人として過去に獲得したタイトルも物凄い。「ABCお笑いグランプリ」の優勝を皮切りに、関西若手の登竜門「ytv漫才新人賞」優勝、M-1グランプリ2018」優勝と、輝かしい成績を残す。

 

 コンビでの活動のみならず、個でも圧倒的な強さを見せている。

 

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 せいや個人では「21代目MVS(すべらない話)」を史上最年少で受賞、「第33回ものまねグランプリ」はコンビでの出演ではあるものの主にせいやの活躍により優勝を飾っている。

 

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 粗品個人では「オールザッツ漫才2012」内のコーナーであるFootCutバトルを当時19歳の若さで優勝し、M-1優勝からわずか4ヶ月後にはR-1ぐらんぷり2019」で優勝している。

 

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 また、コンビ共に「人志松本のすべらない話」「IPPONグランプリ」「ドキュメンタル」に出演を果たし、松本人志からも非常に高い評価を受けている。先日放送された「ダウンタウンなう」にて、実際に松本人志「千鳥と霜降りはスゴイの出てきたなって思う」と口にしている。天下人のお墨付きまで貰っているのだ。

 

 そんな芸人としてのずば抜けた才能を持つ彼らは、さらに縦横無尽に多方面へ駆け回る。せいやは日曜劇場テセウスの船」にて物語の核となる人物を怪演、同時期に粗品は月9ドラマ絶対零度にて刑事役を全うした。

 

 そして彼らの芸術的な感性は鋭く生きている。漫才師自体がネタを作るという意味で既に芸術性の高い人間の集まりとも言えるが、彼らはさらにその上を行く。

 

 せいやの器用さは並外れている。ものまねにギターや歌など、なんでもそつなくこなしてしまう。加えて、彼のアドリブは物凄い。しもふりチューブにて公開されている「単語ダービー」を見て欲しい。せいやの芸は、絵画界でいうところのピカソの域に達している。彼は、全く説明のつかない笑いを生みだしている。

 

 粗品はギャンブラーとしてのイメージが強いかもしれない。彼の射幸心は非常に強く、大金を注ぎ込むなど狂気的な一面を見せる。一方で、ボカロで自身による作詞作曲を手掛けるといった並大抵でない音楽的才能をも併せ持つ。その危険性と高潔性のギャップが多くの人を魅了するのだと思う。

 

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 2人の個性は全く違うが、それが絶妙にうまく噛み合う。せいや粗品と絡むときに、粗品せいやと絡むときに最も面白くなる。これは千鳥にも同じく言えることであり、コンビで売れるためには必須の条件である。2人の共通点は、お笑いが好きで、お笑いが得意であることのみであると、僕は思う。

 

 彼らの凄みを知るに足る情報は提供したが、ここからは僕自身の見解を紹介しよう。

 

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霜降り明星は新時代のトップリーダーである。

 

 お笑い界は上が詰まっている。ダウンタウンが頂点に立ち成立するピラミッドは、綺麗な正三角形を示さない。霜降り明星が登場するまでは、上と下に萎んでいく「ひし形」構造であったように思う。

 

 ひし形が歪むきっかけになった年が2018年である。9月には芸歴5年目のハナコキングオブコントで優勝し、同年12月には霜降り明星が芸歴6年目にしてM-1グランプリで優勝。お笑い界の「二大賞レース」を、若手が独占してみせた。その意味で、2018年はお笑い史における転換点に他ならない。

 

 そして、第七世代のムーブメントが巻き起こる。EXIT、ミキ、四千頭身かが屋3時のヒロイン宮下草薙ら実力派若手芸人がテレビへの露出を高め、徐々にピラミッド本来の形が再生されていく。

 

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 ダウンタウンの登場からおよそ30年、ようやく吹いた新しい風を、僕らは浴びている。若手にも、チャンスはある。芸人には、夢がある。歴史の転換期に僕らはいるのだ。その革命運動の中心的存在すなわちナポレオンこそが、霜降り明星である。

 

 子どもの頃から見ていた芸人は、ひと回りから二回り上だった。「芸人=おじさん」なんていう子どもの偏見で塗り固められた固定観念が、僕には確かにあった。

 

 霜降り明星が優勝したとき、彼らをほとんど知らなかったのに、なぜか自分のことのように嬉しかった。お笑い高齢化が進行する箱の中で、若手が大旋風を巻き起こしている様があまりにもカッコ良かった。僕がM-1にハマったのも、霜降り明星の優勝からである。

 

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 そして彼らを追いかけるようになった。僕自身も、色んなメディアを縦横無尽に走り回った。2人を知れば知るほど、2人のことを好きになる。

 

 その過程で気付いたことがある。霜降り明星はただの天才ではなく、人間臭さをも放つ天才なのだ。

 

 2人は才能の奥に弱さを持っている。せいやは天才粗品との比較に打ちひしがれることがあった。粗品は自身の才能を煙たがられていると涙したことがあった。その弱さが、2人の天才から滲み出る豊かな人間味として伝わる。

 

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 高校時代、せいやはいじめに遭い、粗品は父親を亡くしている。不謹慎であることは百も承知だが、その過酷なバックグラウンドもまた、彼らの魅力を増幅させている。

 

 2人が互いに助け合う姿も見ていてホッとする。どちらかが参ったときには、もう1人が支え抜く。一蓮托生の同業者である2人は常にそうして前を向いてきたのだろう。

 

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 お笑いには人間そのものを愛するという、他の文化とは少し変わった性質がある。圧倒的な才能に加え、人を惹きつける人間臭さを持つ2人には、天下をとる素質があるだろう。

 

 ファンからの視点にはなるが、できるだけ俯瞰的に分析したつもりである。

 

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 最後に、現代のお笑い界を語るうえで避けては通れぬ「YouTube」と霜降り明星を絡めて分析する。

 

www.youtube.com

 

 かつての「テレビ一強」の時代は終わった。各メディアは、スマホの普及と同時に成長期を迎えたYouTubeとの時間の奪い合いを強いられている。YouTubeは逃げ場ではなく新たな発信の場であるがゆえ、多くの芸人が流入しているのも事実だ。

 

 オリラジ中田、キングコング梶原ら一部の芸人は既にYouTubeに重心を大きく傾けている。彼らは独自の路線を開拓し、テレビでは成し遂げられなかった功績を大々的に挙げている。各々のストロングポイントを最大限に活かした、極めて賢明な生き方だ。

 

 一方で、現時点でテレビ出演の多い芸人はなかなかYouTube流入しない。そこに割く時間が無いことに加え、金銭的に余裕があるからだ。ダウンタウン、千鳥、有吉弘行、オードリー、バナナマンサンドウィッチマンなど、出演本数が極端に多い芸人達はきまってYouTubeの個人チャンネルを持たない傾向にある。

 

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 その点、霜降り明星は邪道である。連日テレビに出演し、ラジオに出演し、劇場に出向き、縦横無尽に走り回る「売れっ子」の二人は、僅かな合間を縫ってYouTubeの撮影を行い「毎日投稿」を実現している。その忙しさは業界トップクラスと言えよう。

 

 それでも2人はずっと面白い。特に、2人でいるときの霜降り明星が最も面白い。面白さを押し付けるなんて無粋なことはしたくないが、本当に面白い。だからこそ「しもふりチューブ」は伸びた。2人の面白さが最大限に発揮されるために用意されるべき環境として、YouTubeが最適解だった。

 

 多様なメディア、媒体で満遍なく活躍するスタイルの開拓者は間違いなく霜降り明星だ。彼らは「現代」で真に売れている唯一の芸人ともいえるだろう。

 

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 しもふりチューブを見て新たに気づかされたことがもう一つある。「2人ともがボケとツッコミ両方の立場に立てる」ことだ。これは売れ続けているコンビに漏れなく共通して言えることであり、自分のなかでも大きな発見であると思う。

 

 漫才ではせいやがボケを連発し粗品が鋭くツッこむスタイルをとるが、オフでもそういう立ち位置なのかといえば実はそうとは限らない。

 

 せいや粗品もどちらの立場にもなりきれる。無論、どちらもめちゃくちゃ上手い。せいやがボケ倒して粗品がシャープに対応する感じも勿論好きだが、粗品が暴れ回りせいやが宥めながらツッこむ感じも面白い

 

 先ほど挙げた「極端に売れている芸人達」はそれを自然にやってのける。ボケとツッコミの両刀使いはバラエティへの適応能力が高いため、きっかけさえあれば必然的に売れるのだろう。

 

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 10年後、霜降り明星はどのような活躍を見せているのか。絶えず新しいことにチャレンジする2人の未来は、全く読めない。だから、行き先を見てみたい。

 

 霜降り明星はまだまだ若い。これからも2人らしく、縦横無尽に暴れまわって欲しい。

 

 そして、僕の人生の楽しみである「お笑い」を教えてくれてありがとうと、いつか会うことができたら伝えたい。

 

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